「遠野物語」の語り部・佐々木喜善氏が生れた家の裏手、
遠野市土淵町山口の丘は命の終着駅だった時代があります。

作業が満足にできなくなった老人を養う余裕のない時代。

年老いて非生産的として捨てられた人たちが、
寄り添いながら過ごした場所がデンデラ野
です。

大学3年の夏休みのこと。

これからは難しくなるので、
以前から興味のあった民俗にまつわる場所を見ておこうと、
このデンデラ野を訪れた時の出来事です。

当時を再現した休憩所なのだと思うのですが、
デンデラ野にはワラでできた小屋がぽつんとありました。

小屋に床はなく、
むき出しの地面に石を並べた簡単な囲炉裏と、
壁に沿ってベンチが置かれているだけ。

私が訪れる何日か前に雨が降ったのでしょう、
外と比べると地面の色が濃くなっていて、
雨風がしのげるだけマシという塩梅で。

この小屋でどんな暮らしをしていたのかは想像できませんでしたが、
死が訪れるのを待つ待合室のようだと感じ。

霊があの世へ行く時に通る場所という伝説も、
こういう場所だから生まれたのかもしれません。

小屋まで歩いているときに通った、
地面の色が濃くなっていた場所がどこにもなかったことに、
デンデラ野を出てから気が付きます。

もう一度、
地面に注意しながらデンデラ野を歩いても、
濡れたような場所はどこにもありません。

人が亡くなるとデンデラ野に埋葬されたという話を思い出して、
自分でもバカだと思うのですが、
この場所に取り残された遺体が染みだした
もしくはこの場所にたどり着いた霊だったのでは。

そんな考えで頭がいっぱいになり、
怖くてその場から逃げ出してしまいました。

母をおぶった姿を描いた石碑まできたころには、
落ち着きが戻っていたのですが。

石碑に描かれた母子の姿をみて、
ひどく罪悪感を感じたことを忘れられません。

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