東京都奥多摩湖にあるドラム缶橋は、
モルタルで出来ており湖上に直接浮かぶ橋で
昼間は観光客がドラム缶橋を渡って楽しむ風景がよく見られる。

当時、地元青梅の中学友人と夜8:00くらい
奥多摩湖をドライブしていた。

その時、たまたまドラム缶橋の近くを通りかかったので、
軽いノリで「ドラム缶橋近くない?行ってみる?」と声かけた。

ドラム缶橋自体心霊スポットなどの噂話は地元でも聞いたことがなく
完全に油断していた俺達はトンネルの側道に延びる脇道に車を停めた。

国道沿いのオレンジの街灯が車まで届いてるので、
そこまで不気味な雰囲気もなかった。

俺と中学友人(勇気:仮名)が車を降りると、
昼間とは全然違う空気感に気がつく

重い
とにかく重いのだ。

勇気も同じことを考えていたかはわからないが、
当時お互いに大学生だったためか、強がって何も言わなかった。

トンネルの脇道にガードレールの切れ目があり、
そこから湖面へ続く30mほどの階段がある。

俺達は、その階段を降りようと階段入り口まで行ったのだが、
国道のオレンジの街灯は完全に死角で湖面までは漆黒の闇しかなかった。

正直、ヤバいと思った。

だけど、勇気が先に進むので
俺も仕方なく勇気に着いていくしかなかった。

階段を降りるに連れて感じる背後からの圧力は凄かった
何か無数の人に見られてるような圧力

俺達はその背後からの圧力に押されるようにして、
ドラム缶橋の入り口に着いた。

湖面に浮いてるだけのドラム缶橋は
チャプチャプチャプチャプと音を立て、
言いようのない気持ち悪さがある。

まだ、湖にかかる吊り橋の方がマシだと思った。

勇気が先にドラム缶橋に足をかけると
ニィィィイイイと橋が湖面を沈み軋む音がした。

その瞬間、俺は「無理だ、渡れない」と思い、
勇気に「もう、戻ろうよ」と言おうとしたその時、
勇気がドラム缶橋を小走りし始めた。

ドラム缶橋がギッギッギッギッと音を上げる。

俺は、これは駄目なやつだと思い、
勇気の後を何も考えずに追いかけた。

俺は20mほど進んだ勇気の肩を掴み、
「おい、戻るぞ!」と声をかけた。

俺自身興奮していたこともあり、
自分がドラム缶橋の上にいる恐怖は通り越していた。

ただ、勇気が小走りし始めた時に
何か変だと思い無我夢中だったのだ。

俺は勇気の腕を掴み、階段を登り無言で車まで戻ってきた。
外の圧力は相変わらず強いので、俺も勇気もすぐに車に乗った。

少し息を落ち着かせて勇気に俺は問いかけた
なんで、はしっの?」と。

すると、勇気は思ったより落ち着いた口調で
わからない」と一言だけ言った。

その後、俺は落ち着いた車内で小学4年生の頃を思い出していた。

水不足で奥多摩湖が干上がった時に
親と湖底を散歩した思い出だ。

記憶は曖昧だが、一つ印象に残っていることがある。

階段を降りて、干上がった湖底に歩を進めると、
古びた井戸がある。

井戸を覗くと湖底の土が堆積していただけだったのを覚えている。
その時に父から聞いた。

ここは小河内村という村だったということを。

その村と今回の体験に関連があるかは全くわからないが、
ただ一つだけ言えることがある。

本当にヤバい場所は、
心霊スポットという噂すら立たない

関連する心霊情報