太古、火山の噴火で固まった溶岩が、
ながい年月の間に山の形になったのが、
東伯郡琴浦町の船上山です。
名峰・大山から北東に続く尾根のはしに位置する船上山は、
古くは大山や三徳山とならぶ霊山として、
多くの修験者たちが登った山です。
溶岩の塊が山の形になるとき、
切り立った崖や滝といった地形になり、
幅600mの岩壁「屏風岩」のような、
独特の景観が生まれました。
山を登るルートによっては、
霊山らしい難所もありますが、
東坂登山道からななら、
初心者でも船上山の頂上へは難しくありません。
私の友人も何度も船上山に登っていて、
それは薄っすらと霧が出た、
神秘的な山の景色が楽しめる日のことでした。
しめった足元に注意して、
歩き慣れた登山道を歩きながら、
ふと足元の斜面に視線を向けると。
登山道を遠く離れた、
山の斜面を歩く人影が見えたそうです。
霧が出ているのにあんなところにいるヤツなんて、
かかわらないほうがいいかな、
でも気がついたものは仕方ない。
もっと変な所へ行って遭難しないように、
登山道の方向だけでも伝えよう。
そう思った友人は、
霧の中を歩く人影に向かって、
おーいと呼びかけました。
友人が二度呼びかけても、
人影はその声を無視して、
どんどん明後日の方向に進んで行き。
これが最後だぞと、
友人が大きく息を吸い込んでいると、
人影は霧に溶け込むように、
その場で消えたのだそうです。
船上山は元弘の乱でおこなわれた戦場の一つで、
嵐の中おこなわれた戦は、
混乱をきわめた戦だったと伝えられています。
今も戦場をさまよう武士たちの姿が、
このあたりで目撃されているそうですが、
友人が見たのもさまよう武士の一人だったのかもしれません。
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