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そこは夏だというのに上着が必要なぐらいに寒く、
濡れた足元が照明に照らされ、
銅や金を採掘するために掘られた穴は長く、
作業の様子をうつしとった人形がおかれ、
当時の様子を解説している音声が、
どこらともなく響いていました。

これは鹿角市にある尾去沢鉱山の跡地で、
閉山した鉱山の坑道を利用したテーマパーク『史跡・尾去沢鉱山』の話です。
以前は『マインランド尾去沢』として営業していました)

元鉱山を利用したテーマパークらしく、
砂金採りや天然石堀りも体験できますが、
やっぱり1番の体験は、実際の坑道を探索することです。

何しろこの鉱山は、少なくても1000年をこえる伝説級の鉱山で、
採掘された金が奈良の大仏などに使われ、
産出量が落ち込んだのは近代になってからのことで、
鉱山としての利用が終わったのが1978年になってからです。

坑道の壁にはまだ鉱石が残っていて、
照明の光に輝いたり、壁の色をまだらにしていました。

坑道を半分ぐらい進んだところだったと思います。

地面で何かが光ったのが見えて、
なんだろうとしゃがみこんでみると、
そこには大きさが1cmは無いぐらいの透明な玉が転がっていました。

それは石やガラスとは違うような手触りで、
これが何なのかはわかりませんが、
きれいに透き通っていました。

まあ落とし物かも知れないし、
坑道から出たらスタッフに渡せばいいかと、
ウィンドブレーカーのポケットに玉をいれて、
ファスナーを閉じました。

天然石ならスタッフに聞けば教えてもらえるだろうし、
天然石掘り体験ができるのなら、
坑道で見つけた玉を持ち帰れるかもしれません。

そんなことを思いながら、坑道の残りを歩いていると、
さっきまでとは雰囲気が変わっているようでした。

気配がするというのでしょうか、
私たちのほかの誰かが近くにいるような、
なんとなくなんですが、
奇妙な感覚にとらわれていました。

こんな場所にいるからだろうと、
なるべく気にしないようにして坑道を進み、
最後にエレベーターに乗って地上に帰ろうとしました。

その時、ポケットに入れた透明な玉を思い出して、
ポケットから取り出そうとしたのですが、
透明な玉はどこにもありませんでした

この尾去沢鉱山は、
第二次大戦中には捕虜を強制的に働かせ、
1936年には作業用の貯水ダムが決壊

一帯で300名を超える犠牲を出しています。

閉山後には溜まった汚水が、
生活用水を運ぶ川に流れ出すなど、
理屈ではない何かがそこにあるように感じてしまいます。

ポケットから玉が消えたときは寒気を感じましたが、
この場所のことを知ると、納得せざる得ないように感じています。

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