国立病院赤痢病棟跡地は、鹿児島県に住んでいる人なら、
だいたい知っている、というくらいの、有名な心霊スポットで、
海沿いの結構寂れた場所に建っています。

もとは結構大きい病院だったようで、私が聞いた話では、
ガス爆発を起こして、何人か亡くなったので、そのまま病院を閉めた、
という事でした。

今から10年以上前の事でした。

当時付き合っていた彼(今の夫ですが)と、クリスマスにドライブに出かけました。
何処に行く、という宛てがあった訳でもなく、何となく海沿いを行こう、と、
いう事になり指宿方面へ車を走らせました。暫く走ると、交差点があり、
車は左に曲がりました。

その時、彼が急に、「あっ、何で俺、こっちに曲がっちゃったんだろう?」と言うのです。
私も妙な気持ちでした。この先は一本道で、例の病院跡の前を通らなければならないのです。

Uターンする場所も見つけ切れず、私達はただ前へと走るしかありませんでした。
その日、私は、クリスマスという事で、教会から頂いた聖歌の入った
カセットテープをかけていました。

だから、車の中は、結構大きい音で神を称える聖歌が流れていました。
どんどん病院跡が近くなって来ます。

一面につたの這った、外塀が見えて来ました。

その時、2台の車が病院跡の横に停まっているのが見えました。
何人かの若い人達が、病院の中に入って行きます。

「わざわざ、クリスマスに、肝試しかあ?」と、彼が言った時でした。
急に私の具合が悪くなりました。

吐きたくて仕方がないのです。
たまらず、シートを倒して横になりました。

その次の瞬間、何かが私のお腹の上に、勢いよく乗っかって来たのです。
それは、私のお腹の上で、勢いよく跳ねだしました。

たまらず、痛い、痛い、と声を上げました。
彼は、車を停める事なく、その病院跡の前を通り過ぎました。

かなり走って、だいぶん離れました。
私は、やっと気分が良くなりました。

「今、私、大変だったわ。とても気分が悪くなって、
横になったら何かがお腹の上に乗ったの。そろが、跳ねだして本当に痛かった」と、
彼に言うと、彼も、「実は気が付いていた」と言うのです。

「気が付いていたなら、どうして、車を停めてくれなかったの?私すごく吐きたかったのに」と、
私が言うと、「あの病院跡の前には、絶対車を停めたくなかった。

お前が苦しんでいた時、俺も苦しんでいた。肩の痛みが半端じゃなかったんだ。
俺が、車を走らせている間、ずっと、消せ!消せ!と頭の中に声が流れていた。

多分この、聖歌の事を言ってるって、すぐに分かった。
だから、急いで病院から離れるべきだ、と思ったんだ」と、彼が言いました。

車を走らせて病院跡の前を通り過ぎた時、彼は、ミラーを覗きました。

その時、運転席のシートの後ろから、女性の顔の上半分が覗いて、
自分を見ている事に気が付いたそうです。

必死に落ち着け、落ち着け、と、自分を励ましながら車を運転したと言いました。
あれからそこには2度と行っていません。

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