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中学生の頃、犬を飼っており、その夕方の散歩が私の日課でした。

コースとしてはだいたい近所の田舎道を歩いていき、
地元の寒川神社さんが見えるあたりの目久尻川河川敷で折り返して、
住宅地にある自宅に帰る…というものでした。

ある冬の寒い夕方のことです。日もかなり短くなっていた頃で、
私はもう帰りたいと思い、犬をせきたてて歩いていました。

すると、その犬が突然驚いたように立ち止まり、うなりだすのです。

かなり臆病な性格の雌犬でしたが、近くに他の犬や猫などもいないので、
何だか変だなあ…と思いつつふと、暮れゆく空を見上げました。

その、バラ色の夕暮れ雲の空を、すうっと火の玉が横切っていったのです。
それはオレンジ色の火球で、めらめらと炎が燃え上がっていました。

音もなく、ただすうっと北に向かって横切っていき、
そして私の視界から消えてしまいました。

私は立ちすくみ、今見たものの美しさに心をとらわれていましたが、
はっとして我に返り、犬を抱きかかえるようにして家に向かって走りました。

子どもの頃からよく、この川には昔「河童」が住み着いていた
という伝説を聞かされ続けてきました。

今でこそ愛らしいキャラクターのようにとられる河童ですが、
実際は非常に恐ろしい水の精霊でもあります。

私は家路をたどる中、この伝説を思い出して背中の毛が逆立ちました。

実際、私たちは水辺に近づきすぎたのかもしれません。
それも、一番現世と異界が近づく、薄明の時にです。

ただの警告でありますようにと、心から願いながらひた走りました。
幸い、私たちは何事もなく帰り着くことができたのです。

数十年たった今でも、あの火の玉の美しさ妖しさは心にはっきりと残っています。

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