〒039-3504 青森県青森市矢田牧原

これは私が体験した話です。

青森市中心街からの浅虫へ向かう途中、必ず通るトンネルがあります。
これが「久栗坂トンネル」です。

「久栗坂」と書いて「くぐりざか」と読むのですが、
実は今使っている久栗坂トンネルは新しいトンネルで、
それ以前に使用していた旧トンネルがヤバイ、という噂を耳にしました。
(そもそも、その辺一帯が心霊スポットであるという話も聞きます)

友人一人を誘って、深夜、青森市内のアパートから浅虫へ向かいました。
白い中古軽自動車が私の愛車で、友人はいつものように
助手席でダッシュボードに足を上げて、シートを少し倒して座りました。

青森の夜は暗いです。
大通りでも、街灯が少ない場所があります。

緊張と興奮で、自然と絵がになりました。当然、久栗坂トンネルを通りますが、
「ここは新トンネルだから出ないよ」と友人が鼻で笑いました。

それもそうだな、と私も頷き、すれ違う車もないまま、トンネルに入りました。
「どう? どう? なんかある?」と私は運転しながら、助手席の友人に尋ねます。

友人は携帯電話の動画機能を使って、トンネル内の壁面を撮影しているようでした。
「なんもねえな」とぼそっと呟いたと思うと、突然友人が「あー」と言いました。

驚くでも、叫ぶでもなく、抑揚のない声で「あー」とだけ言ったので、
「何? どうした?」とチラチラと助手席を見ると、友人は後ろを見ながらこう言いました。

「やべえ、ついてくる」

私は「何が? 何がついてくる?」と尋ねましたが、
友人は顔を真っ青にして俯き、その後、帰宅するまで何も喋りませんでした。

引き返して帰宅して、家まで送り届ける際、友人はぽつりとこう言いました。
「若い女だった。白っぽい服で、裸足だった。

壁にひっついて立ってたのに、俺と目が合うと追いかけてきた。
走れないんだ。歩いてくるんだ。ふらふらしながら、歩いてこっちに向かってきた」

あれ以来、久栗坂トンネルは通らないようにしています。

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