平安時代の頃、鶴見岳社の歌楽女が住んでいたことから、
神楽女湖(かぐらめこ)と呼ばれる湖が、小鹿山の近く、
別府市枝郷町大字神楽女にあります。

そこで毎年、花菖蒲の鑑賞にいくAさんと飲んでいるときに、
数十年前にAさんが体験した話をしてくれました。
 
数十年前のある休日、
Aさんは花菖蒲の写真を撮るために神楽女湖に行き、
昼頃に到着しました。

湖一面に広がる花菖蒲の光景から様々な種類の花菖蒲まで
フィルムが尽きるほどカメラに収めたそうですが、
気がつくと日がすっかり暮れてしまい、
その上、天気も段々と下り坂になっていたそうです。

うっかり写真を撮ることに気を取られてしまい、
昼食用の弁当を食べるのを忘れていたAさんは、
駐車した車の中で、弁当を食べてから帰ることにしました。

弁当を食べ終わって帰ろうとしたとき、
不意に運転席のドアをコンコンと叩く音がしたそうです。

何事かと運転席の窓を見ると、
いつの間にか窓の側に小学校高学年ほどの
女子児童が立っていた
ようです。

Aさんが、どうしたのか女子児童に話を聞いてみると、
女子児童は迷子になってしまい、家までの道が分からないので、
家まで送ってほしいと言ってきた
ようです。

Aさんは元々人が良かったということもあり、
その時は「観光に家族連れで来て置いて行かれた子供か」、
「家に送らないといけないな」位にしか思わなかったそうです。

そういうやり取りをしているうちに、雨まで降ってきたため、
女子児童をこのままにする訳にもいかなくなりました。

当時は携帯電話もない時代で、親に直接連絡を取ることもできず、
女子児童も家の電話番号を覚えておらず、
加えて、たまたま自分の家も同じ方向ということもあって、
Aさんは女子児童を後部座席に乗せて家の場所まで送ることにしました。

Aさんが運転中、バックミラーに映る女子児童を見て、
年の割に無表情で大人しいなと思ったそうですが、
迷子になっていて疲れているせいだろうと
その時は解釈したそうです。

しばらく運転して、女子児童の自宅まであと少しだったので、
もうすぐ家に着くことを女子児童に伝えようとして
Aさんが後部座席を見ました。

後部座席にいた女子児童が消えていたそうです。

運転中だったので、車から出るはずもないですし、
ドアを開けて車から出た音もせず、
最初から居なかったかのごとく消えていたそうです。

Aさんは途方にくれるしかなかったそうです。

Aさんは、その後も神楽女湖に何度も行っていますが、
それっきりその女子児童と会うことはありませんでした。

しかしAさんは後に、社会教育施設に来ていた女子児童が行方不明となり、
神楽女湖の近くの林で事故死した事件Aさんと似たような体験談
「子供に話しかけないでください」という看板が立った噂を耳にしたそうです。

Aさんはそういった話を聞くたびに
あの娘はまだ家に帰れないのだろうか・・・」と
哀しく思ってしまうのだそうです。

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