大原町の大神子海岸はJR徳島駅から車で30分、
日峯大神子広域公園の北側にある海岸です。
松林の広がる砂浜は釣り場として知られていて、
松林の奥はデイキャンプ、
遊歩道が整備された岬はウォーキングなどが楽しめます。
一見すると穏やかな海ですが、
海の中は潮の流れが複雑で、
多発する水難事故を防止するため、
この海岸で泳ぐことは禁止されています。
これは台風が関係した事故ですが、
帰省中の家族6人が波にさらわれた事故が1992年におきています。
なまじレジャーが楽しめる場所にあるだけに、
2015年には海で泳いでいた女性が亡くなっていたり、
この場所で事故をなくすのは難しいものがあるようです。
それはまだ太陽が浮かぶ前、
空が明るくなって魚がエサを探して泳ぎ始める時間帯のことです。
このところ大神子海岸がよく釣れると聞いた釣り好きのMさん、
まだ真っ暗な時間帯から家を出て、
魚がエサを探し出す時間に合わせて大神子海岸へ入ります。
海岸にはすでに釣り人が何人かいて、
これは期待ができそうだと喜んだものの、
Mさんの釣り竿には魚が掛かりません。
好調そうな他の釣り人をチラ見して、
なんだよと悪態をついても、
Mさんの釣り竿はピクリとも動きませんでした。
空も随分と明るくなっていて、
時計を見れば日の出までもうすぐという時間です。
これは粘っても無駄だな。
そう思ったMさんは大きく息を吐き出し、
帰り支度をするために釣り糸を巻き取ろうとすると、
海の色が違うのに気が付きます。
空が明るくなって海の色も青味がましていたのに、
Mさんが狙っていたあたりだけ、
海は夜のままだったのだそうです。
釣り糸を巻き取る手は休めずにジッと海を見ていると、
小魚の群れが散っていくように、
黒いモヤッとしたものが広がるように消えた、
Mさんにはそんな風に見えたそうです。
こんな事は初めてで、
釣り仲間の話でも聞いたことがありませんでしたが、
Mさんにはそれが良くないものだと感じられたそうです。
それから黒いモヤッとしたものは見ていないのですが、
Mさんは夜の海が少し怖くなったそうです。
コメントを残す