一ツ木駅

田舎を出て都市で暮らすことになった私が、
これから都市で暮らすんだと実感したのが、
一ツ木駅でした。

一ツ木駅は刈谷市一ツ木町にある無人駅で、
私が使い慣れていた、古い匂いがついた田舎の無人駅とはちがう、
設備の整った都会の無人駅でした。

あたりには建物がいっぱいで、
商店などもすぐそばにあって、
私は都市での生活に期待が膨らんでいました。

私とは別の都市に出ていった友人Aが、
私のところへ遊びに来たのは、
私たちが新生活をはじめて1週間後のことでした。

たった一週間の再会が、
ずいぶんと懐かしい再会に思えて。

駅の前で少し話込んだあと、
私の住む部屋に移動をはじめたのですが、
Aがおかしなことを言うのです。

駅のホームに変な格好の人たちがいたけど、イベントとかの宣伝かな」
ホームにじっと立っているだけで、電車に乗ろうともしないし

ホームに人はいないのに、
まるで人がいるようにAは言う
のです。。。

1958年の11月のことです。

荷物を運搬していた車両が線路内に入り、
特急電車との衝突事故
を起こします。

このとき、車両が運搬していたのは、
気化しやすい可燃性の溶液でした。

そのため、事故は火災の引き金になり、
車両2台が全焼・乗客と乗員36名が死亡する惨事になってしまいました。

2016年の2月に、
一ツ木駅で20代男性が人身事故を起こしたのを聞いて、
Aとの会話を思い出しました。

それで気になって調べたことで、
過去の惨事を知ることになりました。

Aが見たという人たちは気になるのですが、
私には見えなくて本当に良かったと思っています。

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