〒691-0024 島根県出雲市猪目町1338
出雲大社から見て北東の方角、
JR出雲市駅から車で4~50分ほどの場所に、
猪目(いのめ)という小さな港町があります。
猪目は山と海のすきまにある町で、
一見すると普通の港町なのですが、
船着き場として利用しているのが、
山を切り裂いたような大きな洞窟です。
猪目洞窟と呼ばれるその洞窟は、
漁船が並び足元に資材がちらばる様子からは想像ができませんが、
偶然発見されるまでの1000年以上の間、
この洞窟は死者たちが住む国でした。
昭和23年の漁港拡張工事で洞窟前の土砂が取り除かれ、
多くの白骨が眠る洞窟が発見され、
白骨が身につけていたた装飾品から、
弥生・古墳時代の墓所ということがわかります。
さらに調査が進むと、
猪目洞窟とよばれるこの場所は、
出雲の風土記に人が立ち入ってはいけない、
洞窟に入る夢を見た人は死ぬと記された場所でした。
Mくんが高校生のとき、
先輩に誘われたドライブで、
猪目洞窟の前を通ったのですが、
国道23号線から鋭角に空いた黒い穴を見た瞬間。
体の奥から込み上がって来たものをおさえられずに、
Mくんは先輩の車の中で吐いてしまいました。
山肌をそうように走る道路とはいえ、
それまでなんともなかったのに、
猪目洞窟を見た瞬間に体が急に熱くなって。
それが当たり前のように、
自然と胃の中のものが逆流してきたのだそうです。
出雲大社から見て北東は、
鬼などの良くないものがやってくる鬼門の方角。
古代には黄泉へ続くとも考えられていた洞窟は、
船置き場として日常に溶け込んでいるように見えても、
特別な場所にはかわりがないのではないでしょうか。
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