嬉野市嬉野町吉田にある両岩(もろいわ)に祀られているのは、
孕地蔵といい、子を孕んだまま大名に斬り殺された妊婦を
祀るために作られました。

場所は県道289号線から脇道に入ってすぐの、
山を沿うように敷かれた道路沿いで、
昔はこの道路を大名行列が通っていました。

あたりに住む住人たちが深々と頭を下げる中、
お腹の張った妊婦の頭は、
どうしても他の人よりも高くなって
しまいます。

このことに大名が腹を立て、
頭が高いと妊婦を斬り殺してしまいます。

この妊婦を弔うときにお堂を立てたのが始まりで、
孕地蔵は今では子宝や安産を加護する地蔵として祀られ、
加護を願うためにこの場所を訪れる人は少なくありません。

境内に植えられた銀杏にも安産の加護があるとして、
お守りと一緒に包装された銀杏の実はお堂に置かれ、
子宝や安産を願う参拝者に配られています。

先輩の奥さんに子供ができたことがわかり、
何かしらお祝いをしようと考えていたときに、
私たちは孕地蔵のことを知りました。

それで、私を含めた3人で
お守りをもらいに行ったときの出来事です。

孕地蔵がもう少しという辺りで、
口数の減ったLさんの顔からは血の気が引いていて、
呼吸も浅く早いものに変わっていました。

私たちは車に酔ったのだろうと思っていたので、
具合の悪いLさんは車で休んでいてもらって、
お守りをもらってすぐに車に戻りました。

Lさんの具合はまだ悪そうに見えましたが、
本人が楽になったというのを信じて車を出発させたのですが、
走り始めてしばらくするとLさんの息が荒くなり、
意識が何処かへ飛んでいました。

孕地蔵へ引き返すよりも、
このまま進んで町中まで戻れば病院があるだろう。

そう考えた私たちが町中に急いでいると、
Lさんは「やー」とうわ言を言いながら、
体を揺らします。

私たちにできることは、
少しでも早く病院に行くことだけでした。

Lさんが意識を取り戻したのは、
学校の校舎が見えてきた辺りで、
顔色には赤みが戻って来ていました。

結局このとき何が起きたのか、
はっきりとした原因は今もわかっていません。

こんなことが起きてしまうと、
お守りを先輩に渡すのが怖くなってしまい、
先輩へのお祝いは別のものを送ることになりました。

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