私たちは那須烏山市大金の湯泉神社に来ていて、
思い思いに境内を歩いていました。
こじんまりとした神社なので、
Aも入れて私たち4人の姿は誰かしらが見ていたはずなのに、
誰にも気づかれないでAは消えていました。
古い神社と狛犬があるだけのこじんまりとした境内に、
もう探せる場所は残っていませんでした。
車に忘れ物を取りに行くにしても、
Aは車のキーを持っていません。
仮に林の中でトイレだとしても、
Aが誰にも声をかけずに単独行動をするのはあり得ません。
私はAのケイタイへの呼び出し音を聞きながら、
この神社で自殺した人の幽霊という言葉が頭から消えなくなってました。
出てくれ、
頼むから出てくれ。
祈るように呼び出しを続けていると、
Aが参道を上ってきているのが見えました。
私はよかったと安心したのですが、
「おまえらどこに隠れてたの」とAは不機嫌そうです。
Aの話だと、
いつの間にか消えたのは私たち3人の方だったそうです。
境内に置き去りにして参道を降りているなら、
急げば追いつけるだろう。
神社の裏に隠れていても、
境内から出ていけば追いかけてくるだろう。
Aはそう考えて参道を降りていったのですが、
どこにも私たちの姿が見えないのをおかしいと思って、
境内に戻っていたら私から着信がきたというのです。
A以外は不思議な体験をしたと思ったのですが、
Aは私たち3人がグルになっていると思っていて、
その誤解を解くのが大変でした。
湯泉神社は地域に根付いた神社というような場所で、
有名なスポットではありません。
マイナーとはいえ神社は神の住む場所です。
軽々しく訪れていい場所ではなかったのだと思います。
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