国道9号線をJR下関駅へ向かっていると、
右手に竜宮城を思わせる建物が見えます。
この建物が壇ノ浦に消えた平家一門の墓がある赤間神宮で、
『耳なし芳一』の舞台になった場所でもあります。
私は学生時代の友人たちと一緒に観光で赤間神宮を訪れました。
赤間神宮を歩いているときにどこか上の空だった友人A。
その時は疲れているのかなと思っていたのですが、
後から考えればこの時から異変が始まっていたのだと思います。
その日の夜は、
楽しみにしていたアニメの最終回が配信される日で、
日付が変わるころには友人たちは眠りについていて、
私は部屋と窓の間の、ベランダみたいなところで
スマホにかじりついていました。
感想をつぶやいたりしながら3回ほど最終回を見て、
明日もあるからもう寝ないとと思っていた時です。
寝返りをして、
布団を抱くようにして寝ていたAが寝たまま唸り声をあげます。
声はウアァァンと大泣きしているようにも聞こえて、
つらく苦しそうな声なのに、
Aの顔は無表情のままで微動だにしません。
唸るのをやめて大きく荒い呼吸になったと思ったら、
また唸り声を上げます。
その様子を見ていた私は心配よりも怖さが強くなってしまい、
Aに近づくことができませんでした。
荒い呼吸と唸りを何度か繰り返していると、
ほかの友人が起きてきて、
ボーッとした顔でAの肩を揺すろうと手をのばし。
ウァアとAが発しても、
友人はお構いなしに寝ているAを揺すります。
Aは夢を見ていた記憶がなく、
よくわからないといった表情で、
布団を直して再び眠りにつきます。
私は興奮してなかなか眠れなかったのですが、
それからAが唸りを上げることはありませんでした。
Aは変な時間に起こされたから調子が悪いといっていましたが、
赤間神宮で撮影したAのどんよりとした表情と比べれば、
その顔には生気がみなぎっていました。
平家一門の魂が今も彷徨っているといわれていますが、
Aはうなされていただけだといいのですが…。
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