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誰かが「県民の森に幽霊が出るらしいぜ」と話を始めると、
それなら俺も私もと聞いたことのある怪談を話す流れになった時です。

県民の森の中で首を吊った自殺者の幽霊が出る
という話が出たのですが、Yが子供のころ県民の森
親とはぐれた時に、空中に浮いた紫色の人を見たと言うのです。

親と一緒に森を歩いていたYは、
はしゃいで先へ先へと進んでいるうちに、
気がついたら親の姿が見えなくなっていたそうです。

森のなかで一人きりになったことが怖くなり、
温度とは関係のない汗がジワリと服を湿らせているのを感じながら、
親が自分に追いつくのを待つしかありませんでした。

「おーいY」と呼びかける父親の声が聞こえてくるまでの時間は、
思い出してみれば、それは1分に満たない時間だったのかもしれませんが、
子供のYにはとても長く感じられたそうです。

安心するとパッと視界が広がり、
それまで目の前の木や葉っぱしか見えていなかったのに、
木の幹に白い苔がついているのや、
幹にへばりついているようなキノコにも気が付くようになります。

Yが空中に浮いた紫色の人を見つけたのもこの時でした。

視線を少し上げると、
30mほど離れたところに浮いている人がいるのに気がついて、
顔が濃い紫色でほとんど見えなくて男か女かもわかりません。

とにかく顔の色の印象だけが強く残っていて、
どんな服装だったとか他のことは記憶に残っていないそうです。

スッと母親の顔が目の前に現れると、
嬉しさがこみ上げてきて涙が溢れだしたということです。

幽霊が出ると言われている場所なだけに、
私はYが見たのは幽霊ではないと言い切ることができません。

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