これは森の中で朽ちている療養所、
賀茂郡東伊豆町の稲取廃隔離病棟での心霊体験。
自炊をしているオレの部屋なら手料理が食べられる。
連休なのにやることがない、
いつものメンツがオレの部屋に集まって、
ゲームをしたり酒を飲んで仕事のグチを言ったり、
そんないつもの集まりをしていたら。
「明日、ここ行かない?」
差し出されたスマホの画面を見ると、
廃墟の画像が表示されていた。
稲取廃隔離病棟は結核等の感染症患者を隔離する施設で、
病棟としての役割が終わるころに、
自然災害で稲取廃隔離病棟への道が塞がれて、
費用面の都合でそのまま放置されたらしい。
休日をダラダラと過ごすよりはましだろうということで、
全員そのままオレの部屋で雑魚寝をすることになった。
135号線のトンネルを出た所に車を停めて。
車を停めた場所から続く細い道を下ると、
稲取廃隔離病棟が見えてきた。
放置された建物は荒れ放題で、
完全に崩れている所もある。
淀んだ空気の匂いが建物に染み付いて、
建物からなんとも言えない匂いがしていた。
建物の外から中を眺めていると、
Fが急に辺りの藪のほうに向かって行く。
藪に入ったところでしゃがみこんだFが嘔吐。
慌てて駆け寄ると、
Fの顔は真っ白で。
オレたちが投げかける言葉も、
Fには聞こえていない状態だった。
とにかく車を停めたところまで戻って、
ペットボトルの紅茶で口をゆすがせた。
オレは食中毒が心配で、
早くFを病院へ連れて行こうとしたら。
少し喋れるようになったFが車が汚れるとか言うから、
Fの足元に車のフロントガラスにつける日除けを敷いて。
急いでFを病院へ連れていった。
Fの状態は食中毒とは症状が違うようで、
病院では日頃の疲れが原因と診察された。
Fの話だと稲取廃隔離病棟についてしばらくしたら、
唸るような音が響いてきて。
変だな、
そう思ったら急に気持ちが悪くなったらしい。
病気で死んだ患者が霊になって、
今も病棟にとどまっている。
稲取廃隔離病棟の画像を載せていたブログの言葉が、
Fの体調不良のあとでは強い言葉になっていた。
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