知り合いのSはサーフィンを趣味にしていたのですが、
あるとき、東浜海岸へ行ってからピタリとサーフィンを
やめてしまいました。

何があったのかは気になりましたが、
あれだけ熱心だったサーフィンをやめるなんて、
相当な理由があるのだろうと思って、
私から理由を聞くことはありませんでした。

Sの口からこの事について語られたのは、
友人の部屋で飲んでいたときに、
テレビ番組で海の事故を取り扱っていたときです。

そのときの東浜は穏やかで、
波はあるものの物足りなさを感じていました。

ただ、東浜にいるのは自分だけで、
透き通った海を独り占めしているようで、
のんびりとした空気を楽しんでいたそうです。

波に向かって進んでいるときに、
手首の上あたりを何かに掴まれたのは、
何本か波に乗って、調子が出てきたなと思っていたときです。

しまったと思いながら、バランスを崩したSは海に落ちてしまい、
すぐにでも浮上したいのですが、
誰もいない海に何かがいることにパニックになっていて、
浮かぶことが難しくなっていました。

そんなに浜辺から離れていなかったこともあり、
海水を多少飲んだだけで済んだのですが、
腕には掴まれたときの感触が残ったままだったそうです。

県警が発表している水難事故の数字を見ると、
何年もサーフィンで死亡事故は起きていません。

ただ、水難事故を起こした半数近くの人は、
死んでいる
ことをSは知っていました。

腕を掴まれた感触はSの脳裏に刻まれてしまい、
海で死ぬということを実感して、
Sはサーフィンをやめたのだそうです。

Sはこの出来事から、海はもちろん、
湯船に入ることも怖くなったのだそうです。

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