つい先日、豊浜トンネルの近くで幽霊を見た
という話を聞き、あの事故から10年や20年位では、
犠牲者の無念は晴れないのだろうと思うのと同時に、
私が幽霊を信じるきっかけになったのも、
この事件からだったのを思い出します。

私がまだ現場で仕事をしていた時なので、
1990年の最初の頃ですが、
豊浜トンネルを定期的に走行していました。

古いトンネルの老朽化で新豊浜トンネルが作られたのですが、
トンネルが作れてから10年も経っていないのに、
小さな崩落が起きた時にはこのトンネルは
大丈夫なのかと不安に思っていました。

それもあってか豊浜トンネルを走行していると、
居心地が悪いと言えば良いのでしょうか、
早くトンネルから出たいという気持ちが強くなり、
運転が乱暴になってしまう事がありました。

今にして思えば、
何かが私に危険を知らせようとしていたのでしょう。

豊浜トンネルは2度の小規模な崩落を起こし、
1996年ついに大崩落を起こしてしまいます。

この知らせを聞いた時は、
驚きの後にやっぱりかとも思いました。

崩れた岩盤を取り除く発破作業を行った時に、
崩れた岩盤が鬼の顔のように見えるという写真を見た時は、
岩盤の下に埋もれた人達の事を考えて胸が苦しくなりました。

大崩落より以前に、
豊浜トンネルで幽霊が出ると聞いた時は、
その手の話を私自身全く信じておりませんでした。

同僚が夜に走行していた時に、
豊浜トンネルで幽霊を見たと言って来た時には、
同僚が居眠りをしていたのだと思い、
居眠り運転で新聞に載るのは止めてくれよ
と言っていました。

ところがこうして大崩落が起きてしまうと、
幽霊がこの場所に近づいてはいけない、
そう警告してくれていたのではないか、
そんなふうに思えて仕方がありません。

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