山梨県西八代郡市川三郷町

いつものお坊さんが急病で、
代理のお坊さんがお盆で来た時に、
そのお坊さんから聞いた話です。

まだ仏門に入る前で、山梨県市川三郷町の、
旧石割トンネルに肝試しに行った話なんですが。

旧石割トンネルは、
ずさんな安全管理でけが人は当たり前で、
何人も死人が出たと言われていて。

供養の石仏をトンネルに置いても、
死んだ作業員の霊が出るという心霊スポットなんですよ。

トンネルに入るとデコボコした壁が作る影が、
とても気味が悪くて。

入り口でもう帰ろうと言い出す人もいたんですが、
旧割石トンネルの石仏を見ないとここまで来た意味が無いだろ、
そう言ってトンネルを進んで。

トンネルの壁をくりぬいただけの祠を覗きこんだら、
石仏の顔が私を睨みつけているように感じて、
こういう場所だと仏様も怖く見えるんだなと思っていると。

「おい、あれ」

その声に振り向いて石仏の反対の壁を見ると、
私達ではない影が幾つもあって。

私には人影のように見えたんですが、
後で聞いたら人の顔に見えた人もいて。

私達はそこから動けなくなって、
それから息苦しくなってきて、
私はなんとか石仏に向かって手を合わせて。

すがる気持ちで、助けてください、
目をつむってそれだけを願っていると。

身体が急に楽になって、
辺りを見ると影は消えていて。

地面にうずくまっている友人を起こして、
全力で旧割石トンネルの出口まで走りました。

走りだすときに見た石仏がとても穏やかな顔をしていて、
ああ私達は助かったんだと安心しました。

この出来事がきっかけで、
仏門に入られたそうなのですが、
信じてくれる人は少ないそうです。

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