群馬県にある中山峠は、山を切り開いた形で道路が作られ、
起伏が大きい峠です。

通勤、帰宅時には多くの車が通るありふれた道路なのですが、
霊が出るという噂を時々耳にします。

その事に何か関連があるのか、
近隣の地域の中でも異常なほど交通事故が多い場所です。

そのため、警察の取り締まりも厳しくなっているようですが、
そこを通る車のほとんどが不自然なほどにスピードを出してその峠を走り抜けます。

よく耳にするのが、深夜にその道路を通ると
いるはずのない歩行者がじっと車の方を見つめてくるというものです。

ただ、その話のもとになるような死亡事故や事件はないようです。

道路が火葬場と斎場に挟まれていることが、
何か関連しているのでしょうか。

私もよくこの道路を利用します。
そして、不自然なものを目にした事があります。

ただ、私が見たのは歩行者ではありませんでした。

峠の中間あたりにある交差点で、私は信号待ちをしていました。
時刻は午前一時ほど、ほとんど車ともすれ違わず静かな夜でした。

ぼーっと信号を眺めていると、対向車線に一台の軽自動車がやってきました。
二車線で道幅もあり、夜の暗さも重なってその車にいる人の顔ははっきりと見えません。

ですが、運転手の隣の助手席で何かが動いているのが分かりました。
何やら棒のようなものが、車内の中でぷかぷかと動いていたのです。

このまま見ていてはいけないと思いながらも
目を離さずにいられないでいると、信号が青になりました。

ゆっくりと車を発進させ、軽自動車とすれ違います。
助手席で動いていたのは、人の腕でした。

宙に浮いたひじから先の2本のうでが、
何かを掴もうとしているようでした。

運転席の男性はまったく気にする様子はなく、
助手席の異常な乗客に気付いていないようでした。

その時は「変なものみたな」という感覚しかなかったのですが、
今となって考えるとあの腕は運転席にいる男の人を
必死に掴もうとしていたように思えます。

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