旧日見トンネルは芒塚町を走る県道116号線のトンネルで、
確か二人乗りバイクの事故が起きて、
そのとき後ろに乗っていた女性の幽霊が出ると
聞いたことがあります。
なんでも、事故のはずみで欠損した自分の身体を探して、
事故のあったトンネルをさまよっているのだそうです。
最初に旧日見トンネルを通ったときは、この話が頭にあったおかげで、
トンネル入り口の黒いシミが意味ありげで、
滴り落ちているように見えて、ビビリながらトンネルにはいったので、
カーステレオのラジオからながれた、CM明けの音楽にも驚いていました。。
仕事で定期的に旧日見トンネルを通るのに、
こんな調子で大丈夫かなと思っていたのも最初だけで、
慣れてしまえば普通のトンネルになっていました。
その日もいつものように旧日見トンネルに入ったのですが、
助手席に上着と一緒に置いていたスマホがしゃべり始めました。
「もう一度お願いします」
「その設定は変更できません」
Siriのことは知っていましたが、
それまで一度も使ったことがなかったので、
そこにいない誰かとスマホが会話をしている状態に、
人生で一番大きく心臓が跳ね上がりました。
スマホはすぐに静かになりましたが、
この状況に運転中の私は何がどうなっているんだと、
ラジオから聞こえる会話が頭に入ってきません。
ラジオ、ああラジオの会話でSiriが反応したんだと気が付いて、
その時は解決したと思っていました。
Siriを起動するためには、
ホームボタンを長押しする必要があるのを知るまでは。
新人が入って、旧日見トンネルを通ることがなくなったときは、
心の中で本当によかったと思いました。
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