これは甲府にある景勝地、
昇仙峡(しょうせんきょう)を訪れた時の出来事です。
本当は紅葉の昇仙峡を訪れたかったのですが、
友人達のスケジュールの都合がどうしても合わなかったので、
私達は紅葉シーズン前に行くことになりました。
それでも日本有数の景勝地だけあって、
その景色は見事なもので、
岩肌がむき出しになったところが顔に見えるとか、
バスの中からそれなりに景色を堪能していました。
ただ葉っぱの色が黄色っぽくなった木を見ては、
もう少しでもっと色づいた景色を見れたのに、
そう思ってしまいます。
その時の私は後ろの座席に座っていた
友人からガムをもらっていたのですが、
窓際に座っていたYが私の肩を叩いて、
この先にもう赤くなった所があるぞほらソコと指さします。
こんな時期にまさかと思いながらYが指差した方角を見ても、
空の青と木の緑の景色しか見えません。
「いやほらソコだって、ほら」
「え、あれ?ゴメン。見間違いだった」
Yが食い下がろうとしたら急に狐につままれたような顔になって、
自分が見た紅葉はガラスの反射を見間違えたのだろう、
そう言ってため息をつきます。
よくないものに魂が穢されたとき、
目に見える景色は血に染まって見える。
何で知ったのかは覚えていないのですが、
昔から頭に残っている言葉で、
この時のYの様子をみて真っ先に頭に浮かんだ言葉です。
私達が乗ったバスが走行していたグリーンラインでは、
昭和52年に昇仙峡バス転落事故が起きていて、
バスに乗っていた乗員・乗客がこの場所でさまよっていると言われています。
今でも時々、
この時Yが見た景色が光のイタズラだったのか、
血に染まった景色だったのか、
思い出して考えてしまいます。
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