奥多摩駅から県道204号線を、
人里から離れるように北に進むと、
石の塔が目印の廃墟があります。

それは近くに鍾乳洞があることから、
鍾乳苑(しょうにゅうえん)と名付けられた
宿泊施設の廃墟です。

営業していた時なのか、
廃墟になってからかはわからないけど、
鍾乳苑で自殺した人がいる

行ったことのある人によると、
人には分からないけど死臭が残っていて、
その匂いに虫が集まって来ていたって。

ドラマとかで見る黄色いテープも残っていて、
この場所で何か事件があったのは間違い無いんだ。

この場所を見つけてきたAの話を聞いて、
これから向かう廃墟への緊張が高まりました。

枯葉に埋もれた庭に入ってすぐに、
目の前をコウモリが横切って、
それに驚いて尻もちをつきます。

建物の様子からも、
放置されて20年ぐらいなのでしょう。

コウモリだけではなく、
私達の気配に驚いて逃げる鳥等もいて、
鍾乳苑は自然の物になっていました。

最初こそ物音がするたびに驚いていましたが、
それにもなれて、
建物へ入る入り口を探している時でした。

ケケケ

漫画で笑いを表す擬音でしか見たことが無い、
それも感情が全く感じられない声が何処かから聞こえて来て。

私達はお互いに顔を見ますが、
この声をだれも説明出来ません。

いつの間にかあたりの葉っぱを揺らしていた風も止んで、
シーンと静まりかえっている中で、
さっきより短い「ケケ」と声が響きます。

1人の友人が走りだしたのを合図に、
私達は次々とその場から逃げ出しました。

途中何度か枯葉で足を滑らせながらも、
何とか車にたどり着いたのですが、
体が震えていてすぐに車を出すことは出来ませんでした。

幸いなことに、
私たちにはそれ以上の事が起きなかったのですが、
あの時聞こえた声を忘れることは出来ません。

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