山刀伐峠(なたぎりとうげ)は『奥の細道』で
松尾芭蕉が歩いたことで知られる場所で、
その当時は山賊が旅人を襲うことがあったので、
芭蕉も護衛と一緒に歩いたと書き残しています。
そんな山刀伐トンネル近くに、
女性の幽霊が出ると本に取り上げられたことがあります。
トンネル近くの山中で首吊りをした老夫婦が、
首が千切れて遺体が道路に落ちてきたという話もあり、
トンネルの方が有名らしいのです。
芭蕉の時代にも山賊に襲われた犠牲者の幽霊が、
山刀伐峠で目撃されています。
個人的には『歴史の道』と名付けられた山道を歩くことがあるので、
時期になると目撃されるクマの方が怖いと思っていました。
その時も私は歴史の道をひとりで登っていて、
途中まで登ったところで休憩をしていた時です。
ブナの木やヤブが生い茂る私の背後の山の中から、
ヤブをかき分けるザザッという音が聞こえてきて。
それが随分と近くから聞こえたものだから、
私はなにか獣が近くにいると思い背筋が凍りつきます。
できればそのまま何処かに行ってくれと思いながら、
座ったままじっとしていると、
音はこちらにまっすぐに近づいてきます。
音が聞こえた時にすぐ逃げた方が良かったのかもしれませんが、
突然の事に驚いていた私は、
近づいてくる音に怯えながらじっと固まっていました。
私の耳元で音がしているのかと思うくらいまで近づいた時に、
さっきまで聞こえた音が急に静かになり、
しばらく待ってもシーンとしたままで。
様子を確認するために、
私は藪の中に入ったのですが、
獣が近づいていた痕跡は見つけられませんでした。
樹木も生い茂っていてまっすぐに進むことが出来ないのに、
音は確かに真っ直ぐに近づいてきた事に恐ろしさを感じて、
私は急いで荷物を背負って下山しました。
この出来事があってから、
山に行くときのザックには、
用心のためにお守りを付けています。
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