転勤で何年も県外に住んでいたのですが、
転職を機に地元に帰ることになり。

住まないと分からない街の変化に、
戸惑うことばかりでした。

そんな話を地元の友人たちにしたら、
石廊崎(いろうざき)ジャングルパークの話になって、
子供の頃に行った時の話で盛り上がりました。

静岡県賀茂郡南伊豆の石廊崎ジャングルパークは、
南国のジャングルを再現していた植物園で、
私が県外に住むようになったころに閉園していたそうです。

閉園されて放置されたせいで、
温室の中が本当にジャングルのようになっていると聞いて、
懐かしさと好奇心で石廊崎ジャングルパークへ
肝試し
に行くことになりました。

温室としては機能していませんが、
外と比べると建物内は暑くて、
子供の頃よりジャングルを再現しているように思います。

強いと思っていたサボテンが茶色や黒色に変色していて、
弱いと思っていたハイビスカスがきれいに咲いているのに関心していました。

「おい、あれ」

急にAが声を上げて、
植物の生い茂る方に向けて指をさします。

その方向を見ると、
透明な何かが動いているように見えるのに、
枝や葉っぱは動いていません。

Aが声を上げたことで、
何かがこちらへ来るのではないかと不安でしたが、
そのまま植物の奥へ消えいきます。

私は人差し指を口にあてて、
静かにしようと合図を送ってから、
その場を後にしました。

後日聞いた話では、
石廊崎ジャングルパークで自殺があったということです。

誰の目にも触れない樹海になった植物園のなかで、
正体不明の透明な何かを見た後では、
幽霊の存在をそんなバカなと否定することはできませんでした。

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