カメラマンのHさんは、
趣味で史跡や名所の写真を撮影しています。
売れることもあるという状態ですが、
すこしでも金になるならと思い。
素材販売を仲介するネットサービスに、
撮影した写真を登録していました。
購入された写真がどう使われているのかと思い、
画像検索をすると、検索結果には、
心霊スポットをまとめたサイトが幾つか表示されます。
史跡や名所が心霊スポットなのはよくあることなので。
需要があるならとHさんが訪れたのが、自殺者の霊が自殺者を呼ぶ、
徳島県美馬郡つるぎ町にある土釜の滝(どがまのたき)です。
繊細でキレイな滝が自殺の名所ねーとHさんは思いますが、
被写体として三連の滝壺にやりがいを感じます。
駐車場に車を停めて、
遊歩道から土釜の滝へ向かうと。
これから帰る学生グループとすれ違い、
土釜の滝の撮影に集中できることに喜び。
遊歩道から土釜の滝が見えるので、
大体の撮影場所に目星をつけながら進みます。
心霊系のサイトで評判になって、
そこから他の写真も売れたらいいな。
このカメラマンはいいぞと話題にならないかな。
ああ、
話題になるような人はとっくに結果をだしているか。
今のままだとダメだよな。
煮え立つ土釜に例えられる三連の滝壺に着いて、
底の見えない滝壺を眺めていると。
どうせ結果は出せないんだから、
この中で一つになってもいいんじゃないか。
そんな風に思えてきます。
「すいません・・・足元」
そう言われて足元を見ると、
ハンカチが落ちていました。
すれ違ったグループの一人が、
忘れ物を取りに戻ったようです。
Hさんは将来について思う所がありましたが、
それほど悩んではいませんでした。
駐車場から僅かのあいだに何もかもがどうでもいい、
そう思ったのは滝壺の霊に呼ばれたからでしょうか。
土釜の滝に飛び込みたいとは思っていませんでしたが。
滑りやすい岩場をあんな状態で動いたらもしかしたら、
その時のことを思い出すと今でもゾッとするそうです。
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