私が経験したある恐怖体験について話します。
その場所が心霊スポットと呼ばれていたのはもうずいぶんと前の話です。

少なくとも私の地元で私と同年代の人間の間では有名な場所でした。
今でもその場所が心霊スポットと呼ばれているかは知りません。

そこは長野県の博物館天蚕センターと呼ばれる
信州の名物博物館の脇の林の中で、
曰くその場所で自殺をした人がいるとか噂されていた場所でした。

その近くに住んでいた男の子が何度か幽霊を見たと言っていて、
その場所に夜近づくのを酷く怖がっていたのを鮮明に覚えています。

今はもうすっかりおじさんの私が子供の頃ですからかなり前の話になるのですが。
私には当時6つほど年の離れた小学校に入る前の弟がおりました。

当時の私の家はデフレ不況が深刻化した今と違い
商売が軌道に乗って大変忙しかったのを覚えています。

小さな弟の面倒を見るのは私の仕事でした。

天蚕センターは私の家の近くにあり、
ちょうど小学校の課外授業で行ったその場所を弟に見せてやろうと思ったのです。

私は幽霊が出るというその林道を通って弟をその博物館へ連れていきました。
行きは何もありませんでした。

その時はまだ太陽が昇っている時間でしたし、
林の中で昼でも暗い場所なのですが、
私はあまりその幽霊話を信じていなかったのもあり、
その場所を特に気にすることなく通っていました。

恐怖体験が起こったのは帰り道でした。

林の中を歩いていると
突然弟が上空を見上げそのまま目を見開いたまま固まったのです。

その時の弟の異様な様子は今でも忘れられません。
頭の上に何かいる異様な気配がしました。

当時の私は結局頭の上を確認することはできませんでした。
見上げていたら私もその恐ろしい何かを見ていたかもしれません。

私は弟の手を引いて全速力でその場を離れました。

林の中を抜け明るい道路に出たときに、
弟は大きくため息をついてこう言いました。

ふ~殺されるところだったね

私はギクリとしました。
震える声でなんで? と聞き返しました。

弟は「だって白いフワフワのお姉さんが追いかけてきたじゃない

と言ったのです。
この日は私にとって忘れられない日になりました。

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